キヤノンEOS C700 インタビュー — キヤノンの商品企画担当に聞く

キヤノンEOS C700 インタビュー — キヤノンの商品企画担当に聞く

キヤノンがEOS C700(以下C700 他同様)を発表したが、最も話題を呼んだことのひとつが“形が変わった”ことだろう。CINEMA EOS SYSTEM発売以来続いてきたC500、C300 Mark IIに代表される形状は、ソニーのF55、パナソニックのVaricam35やArri Alexaと同じように、“縦長”に変わったのだ。当然そこにはキヤノンのC700に対するコンセプトやストラテジーがあるわけで、今回このあたりを中心にキヤノンのC700 商品企画担当 主幹の石原 明仁氏にインタビューした。

c700photo01c

早速形状の話から伺ってみよう。

質問:形状をC500から変更されたのは何故ですか?

石原氏:映像制作の現場に伺ってみると、機能や拡張性をブラッシュアップして欲しいという要望が強いということもあり、フラッグシップで業界標準とされている操作性を持ちながら(ネジ穴などの)拡張性を持ち、様々な映像制作のシチュエーションに適する形状としました。また端子につきましても、C300やC500ではコンパクトさを優先させなければいけないということで、映像出力端子などの数に制限をかけなければいけない部分がありました。C700では、4Kのベースバンド出力が可能となるように4本のSDI-OUT端子の構成にしたり、この大きさに見合った機能価値を提供することを試みています。

理由は非常に明確で、C500がポータブル性を追求したのに対し、C700はメインカメラとして使われ方を想定したのだ。即ち、ターゲットマーケットが変わったのだ。

質問:C700のターゲットマーケットはどこですか?

石原氏:C500はコンパクトデザインで、シネママーケットでは機動性を重視するお客様に向けた商品提案になっておりますが、C700ではAカメ(メインカメラ)をターゲットにした製品になっております。ハイエンドマーケットは、映画制作においてはハリウッドの映画をメインとし、ヨーロッパや日本、アジアなど様々なマーケットがあるかと思います。我々は、それぞれのハイエンドのユースケースを想定しています。また、B4マウントアダプターやショルダーサポートユニットの商品化、IPストリーミング機能搭載などにより、放送業界における制作市場、即ちEFP市場もテーゲットに見据えた商品としています。

いや、ターゲットマーケットは同じだが、使われ方の想定が変わったという方が正しいかもしれない。もちろんC500やC300 Mark IIでもメインカメラとして使われるケースは多々あったが、より“本格的”に対応できるカメラとしたということだろう。

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では、そのハイエンドマーケットやメインカメラとして、C700の強みは何だろうか?

質問:C700の強みは何でしょうか?

石原氏:記録フォーマットは、内蔵で4K/60pまで、XF-AVCフォーマットで記録可能です。また業界で広く使われているApple ProResにも内蔵記録で対応しています。また、大きな強みとして、CODEX社製のRAWレコーダーを採用しており、これと接続することにより4K RAW 120pを実現することができました。HDRの面にも訴求しており、ダイナミックレンジは最大15stopまでの表現が可能です。これを出力するにあたってはST.2084に対応しており、HDR対応モニターとの親和性といった面でも効果を発揮するカメラです。 更に弊社は豊富なレンズ資産(EFレンズ)を有していることから、C700もEFレンズに対応することにより、他社にない映像表現を、レンズ、センサー、エンジンを駆使することによって提供することができます。

自社のEFレンズ資産をフルに活用できるというのは、まさに同社の強みと言える。EFレンズを使える他社のカメラは幾つもあるが、EFレンズを細部にわたって知り尽くし、また真にそれを生かせるのも同社だけだろう。また4K RAW 120pはRAWのハイスピード記録を行う場合の選択肢の一つになるだろう。

さて、センサーは4.5KCMOSだが、この選択の理由は何だろうか?

質問:センサーを4.5Kにした理由は何ですか?

石原氏:大きな理由はサラウンディングエリアで、記録映像の周辺を見せるための機能です。また、CODEX社製のRAWレコーダーを使って4.5KをRAW記録することも可能で、その場合は100fpsまでのハイフレームレートを記録できます。(ファームウエアのアップデートが必要)

即ち、フレームインする前に被写体を把握するといった使い方を想定しているということ。4.5KのRAWを記録するよりは、こちらの使い方のほうが圧倒的に多いだろう。

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C700の画作りについても聞いてみよう。

質問:画質的に、狙ったトーンなどはありますか?

石原氏:基本はCINEMA EOS SYSTEMシリーズのトーンを採用しています。そのためC700をAカメで使った場合、C500、C300 MarkII、あるいはC100をBカメ、Cカメで使っていただいても、画のトーンがずれることはありません。またLogに関しましても、新しくCanon Log3を追加しています。Canon Log2を今まで提供してきましたが、こちらはグレーディングで画質の作り込みを行うユーザーを想定したLogです。今回のCanon Log3は暗部ノイズを改善するとともに、階調を整える程度のライトなグレーディングを行うユーザーに使っていただけるようなLogとして追加しました。

C500やC300 Mark IIのトーンに合わせることにより、従来のラインアップをポータブルカメラとして安心して使えるわけで、ラインアップの総合力を生かした強力なストラテジーと言える。Canon Log3がC700に追加されているが、そうすると、C500やC300 Mark IIにもCanon Log3を追加して欲しいところではある。

さて、C700ではCODEX社製のRAWレコーダー、CDX-36150がドッキングできるが、キヤノンはRAWをどのように位置付けているのだろうか? 最後に、同社のRAWに対する考え方を聞いてみた。

質問:RAWの位置付けについて、どのようにお考えですか?

石原氏:RAWは映像を表現する上で、最も色域やHDRに対して自由度を持たせられるフォーマットであると考えています。昨今の編集環境を見ると、やはり重たいという理由で多少採用されないケースもありますが、将来的にはGPUやCPUの進化、あるいはストレージの容量アップなど編集環境の進化によってRAWが一般的になるような環境が構築されるのではないかと思っており、その時にしっかりと訴求できるように、今後も丁寧にユーザーの声を聴きながら映像表現を作りだしていきたいと思っています。

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キヤノンのCODEXのRAWレコーダーを使う方法は、パナソニックがVaricamで、やはりCODEXのRAWレコーダーを使いV-RAWを提供したのと似ている。どちらも非圧縮RAWをサポートする。一方、RED、やブラックマジックデザインはもともと圧縮RAWを採用しており(非圧縮も可能)、ソニーもRAWのようでありながらRAWでないというX-OCNを発表している。前の2社は非圧縮の訴求、後の3社に共通するのはデータ量の削減である。

アプローチは各社各様だが、後加工で柔軟性のあるフォーマットの可能性を重要視していることは間違いない。ただ、非圧縮RAW記録は非常にハイレートで、これを編集することを考えると高性能な機材を揃えなければならないが、その条件を満たせるユーザーは限られるだろう。将来RAWが下層マーケットでも使われるなら、そしてそのマーケットをターゲットにするなら、総合的にリーズナブルなコストで実現できる方法が必要だろう。

C700はCINEMA EOSのフラグシップであるとともに、ターゲットマーケットを明確にハイエンドマーケットに置いたカメラと言える。ただ、ハイエンド映画制作では依然としてArriやREDが優勢で、ここには日本の他社メーカーを含め、なかなか切り込むのが難しいのが実情だ。やはりメインマーケットは、ローカル映画やオンエア系のコンテンツなどコストに厳しいマーケットが多くなるのではないだろうか。その場合はXF-AVCやProResで記録することになるのだろう。しかし、もし今後RAWを進めていくのであれば、データ量の低減とカメラ内部記録は必須になってくるだろう。

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