キヤノン5D Mark IV インタビュー — キヤノンの商品企画担当に聞く

キヤノン5D Mark IV インタビュー — キヤノンの商品企画担当に聞く

フォトユーザーからは高い評価を受けているEOS 5D Mark IV(以下5D Mark IV)だが、ビデオユーザーからは必ずしもそうではない。ビデオ機能を進化させたミラーレスが多く発表される中、それらに比べビデオ機能が見劣りするのが原因だろう。しかし、キヤノンはそれが分からなかったわけではなく、そうする理由があったはずだ。今回は、その点を中心に5D Mark IVの商品企画担当 原 敬俊氏にインタビューした

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その発表を大きな期待を持って待たれたヒット商品はそれほど多いわけではない。ヒット商品は、マーケットが予想もしないうちに突然出現することの方が、むしろ多いだろう。キヤノン EOS 5D Mark IIも発表当時はだれもが予想しなかった。

しかし5D Mark IVは違った。誰もが4Kの搭載を予想し、そして5D Mark IIの再来を期待した。しかし、その期待が大きかっただけに、厳しい評価も多いように見受けられる。

もちろん、キヤノンも思いつきで商品開発しているわけではなく、当然そのコンセプトやストラテジーは練りに練られたもののはずである。そこで、キヤノンにその真意を聞いてみることにした。インタビュー内容を簡単にまとめてみよう。

まず、DSLRやミラーレスカメラでビデオを撮影するユーザーにとって、このカメラはどちらを向いて作られているかが気になるところである。

質問:5D Mark IVのターゲットマーケットはどこでしょうか?

原氏:EOS 5Dシリーズはまず静止画市場、プロフォトグラファーやハイアマチュア層に圧倒的に支持されてきたカメラですので、静止画機能をしっかりと進化させるというところに、まず注力しました。その上で、5D Mark II以来受け入れられてきた動画機能も進化させることに注力しました。 ただ、複数のスタッフによる本格的な映像制作にはCINEMA EOSシリーズを使っていただき、それ以外のお客様に、とくにワンマンオペレーションを想定されるお客様などに5D Mark IVを使っていただくことを想定して、5D Mark IVの動画機能の強化をしました。

答えは明確で、このカメラはまずフォトグラファーに向けて作られている。その上で動画機能も与えられているのだ。しかし、静止画も動画も撮るというユーザーが増えているのも事実で、キヤノンも、

原氏:昨今、静止画も動画も一人で撮るユーザーが増えてきましたので、そのような方々にも満足いただけるような動画機能を目指して開発しました。

とコメントしている。

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それでは、静止画も動画も撮るユーザーとは、具体的にどのようなユーザー層なのだろうか?

質問:フォトとビデオのマーケットは、将来どのようになっていくとお考えですか?

原氏:ここ10年ほどで、一つのカメラで静止画と動画の両方が撮影をできるようになりましたが、単に静止画・動画機能が一つのデバイスに入っているというのが今までの現状でした。しかし4Kが登場して、動画で撮影して静止画を切り出すという使い方が始まっており、この動きが普及していけば、静止画と動画の融合が今以上に進んでいくのではと考えております。また、静止画の連写スピードも飛躍的に上がってきて、連写したコマを動画に使っていただくことも提案しています。

確かに静止画には追い付かないとはいえ、4Kになって解像度的に静止画として使えるようになったのは確かだ。毎秒30コマで撮影したコマから気に入ったショットを選択できれば、ベストショットが誰にでも撮れる。また、今後連写スピードが速くなれば高解像度の動画として使え、8Kに近い画素数の動画も撮れてしまうのだろう。

原氏:今までは単に別々の機能が同居していたという状況が続いてきたと思っていますが、4K以降それが少しづつ融合されていって、いろいろな表現方法、例えば今まで撮れなかった瞬間を撮るなどといった新たな表現方法が普及・浸透していくのではないかと考えています。

連写で撮った高解像の映像から4KやHDで任意の部分を切り取ったり、パンやズームなどの効果を後処理で加えたりといったことも可能になる。ここで注意しなければならないのは、ビデオだけを撮るユーザー(ビデオグラファー)ではなく、ビデオも撮るユーザー(ビデオフォトグラファー)を想定していること。このあたりのターゲットマーケットのウエイトの置き方が、パナソニックやソニーと多少異なっているところだろうか。

そのあたりを意識して、質問してみよう。

質問:クロップ読み出し、4K DCI規格のみ、またピーキングなどが搭載されていない理由は何でしょうか?

原氏:クロップの仕様にした理由の一つには、このカメラにおいて4K/30pを実現するためというのがあります。DCI規格にした理由は、1D Cの仕様をそのまま5D Mark IVに搭載すべきと考えたためです。動画から静止画を切り出す機能を持っており、静止画を流用するという観点からは画素数が少しでも多い方が良いと考えました。ピーキングなどの機能に関しましては、5D Mark IVにはデュアルピクセルCMOS AFという機能を搭載しており、AFを高精度に行えますので、ピーキングなどの機能が無くても耐えられるのではないかと判断しています。

動画時にセンサー上の読み出し部分が異なると画角が変わるし、解像感や感度的にも不利になるので、やはり全画素読み出しにして欲しいところだが、そのための高速処理エンジンを搭載するのはコストを含み、色々な面で大変ということなのだろう。ビデオ機能のために何処までウエイトをかけるかが、メーカーが想定するターゲットマーケットによって異なるところなのだろう。

ただUHD 4Kやピーキングのようなマニュアルフォーカスアシストに関しては基本機能だけに、搭載して欲しい機能ではある。

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更に、もう少し機能的な話を聞いてみよう。

質問:Canon Logが搭載されていない理由、XF-AVCやProResではなくM-JPEGで記録する理由、HDMIから4Kが出力されない理由はそれぞれ何でしょうか?

原氏:これらに関しては、そのような要求がいろいろな面から来ているのはよく承知おりますが、現時点では今後の課題とさせていただきたいと思います。

これらの機能は、先の機能に比べるとよりビデオグラファー向けの機能になるが、ターゲットユーザーを考えると、ここまでは必要ないと判断したと言うことだろう。HDMIからの4K出力は、一般ユーザーでもテレビに接続して4Kで観るので必要なのでは、という意見があるかもしれないが、このクラスのカメラでは、やはり外部レコーダーへの接続用と考えるべきだろう。

さて、そのような5D Mark IVのビデオ機能に関する強みは何だろうか?

質問:競合面から見たビデオ機能の強みは何でしょうか?

原氏:デュアルピクセルCMOS オートフォーカスが、動画にとって非常に有効な機能であると考えています。追従精度や暗所での追従精度は非常に向上していますので、これが強みと言えます。

即ち、上記のターゲットユーザーは、オートフォーカスで撮ることが多いだろうと想定しているということだ。確かにオートフォーカスが当たり前のフォトユーザーがビデオも撮るなら、オートフォーカスで撮ることが多いだろう。

今回のインタビューで分かったことは、5D Mark IVのユーザーは(ハイエンド)ビデオグラファーではなく、ビデオフォトグラファーであるということと、5D Mark IVはそのターゲットユーザーに合わせた機能仕様であるということ。従って、ハイエンドビデオユーザーが望む機能の全てが搭載されることはないし、そちらの方に行き過ぎるとコンセプトが揺らぎ、どっちつかずになりかねない。

では、ビデオグラファーはどうしたら良いのか?インタビューでも触れられているが、CINEMA EOS SYSTEMを使ってください、ということである。もちろんこれは予想された答えだが、問題はそのCINEMA EOS SYSTEMが5D Mark IVに比べて、あるいはソニーのα7SIIやパナソニックのGH4(多分GH5も)に比べて高価すぎるということだ。

5D Mark IVとは別に、センサーの画素数を減らし、全画素読み出しにして、Canon-LogやHDMIからの4K出力を持ち、XF-AVCやProRes(あるいはLite RAW)で記録するビデオ寄りのEOS 5Dを作れば、ビデオグラファーにとっては(一部のビデオフォトグラファーにとっても)有力な選択肢のひとつになると思うのだが。同様のコンセプトのEOS 1-D Xのラインアップがあれば、最強のラインアップになるだろう。

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