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ソニーFX9ラボテスト

ソニーFX9ラボテスト

ソニーFX9のラボテストを行ったのでレポートする。FX9のラボテストは、FX9発売直後にする予定だったが、今になってしまった。その理由も含めてレポートする。

CineDでは、2020年1月にすでにFX9を購入し、ラボテストをすぐに行ったが、結果の発表は今になってしまった。その理由は、1月のラボテストの結果が驚くほど芳しくなかったからだ。内部コーデックがまだ完全な状態ではないように思われた。

そこでソニーはじめ何人かの専門家と協議したが、原因は分からなかった。ソニーは同社独自の測定方法で測定しているとのことだったが、CineDの結果は尊重するとのことだった。

さらに、新しいファームウェアでの改善の予定もアナウンスされていないし、ファームウエア2.0のリリースは、当初2020夏と発表されたが、10月にずれ込んだ。

そこで、もう一度慎重に検討した結果、とりあえず今年の初めに行ったラボテストの結果を公開することにした。

ローリングシャッター特性

300Hzのストロボライトを使用してバーをカウントすると、結果は22.2msになった。(下の図を参照)

この値は、たとえばシグマ fp(20.8ms)で得られた測定値より少し悪いが、6Kフルフレームセンサーの中では真中あたりだ。たとえば、パナソニックS1Hは、フルフレーム4K DCI 17:9モードで24.2msだ。(16:9 UHDモードよりも画像の高さが7%低くなる)。

しかし、キヤノンC500 Mark IIの15.8ms(DCI 17:9モード)という測定結果と比較すると、FX9は明らかに劣っている。更にキヤノン R5は、8K 17:9フルフレーム読み出しで15.5msを記録した。これは17:9フルフレームセンサーで測定した最高​​の結果だ。

FX9がUHDフルセンサー読み出しで60 fpsを達成できない理由が分かる。センサー全体を読み取るのに十分な時間が無いのだ。ちなみに、これは、今後の新しいファームウェア(4K記録)で5K 60fpsでクロップモードが存在する理由を示唆している。

Rolling shutter measurement of the Sony FX9 in full-frame UHD mode at 25fps.

ダイナミックレンジ

ダイナミックレンジのテスト方法の詳細はこちら

FX9は、ISO800とISO4000のデュアルISOが可能だ。最初にISO800をテストする。下がXYLA21ステップチャートの波形プロットで、12ストップを示している。 13か所目と14か所目が視認できるが、ノイズに埋もれている。

Waveform plot of the Xyla21 stepchart at ISO800 for the Sony FX9 UHD internal XAVC all-I SLOG3.SGamut – 12 stops can be identified above the noise floor.

IMATESTで測定すると、この結果が確認できる。

IMATEST dynamic range analysis of the Sony FX9 at ISO800, using the internal all-I XAVC codec at UHD 25fps with SLOG3.SGamut. 11.5 stops are calculated at a signal to noise ratio of 2 – the medium value in the upper right hand table.

この11.5ストップのダイナミックレンジの結果は、6KフルフレームセンサーからダウンサンプリングしたUHD(3840×2160、内部ノイズリダクション「オフ」)の信号対ノイズ比のしきい値(SNR = 2)時のものだが、特別なことは何もない。

過去の測定からわかるように、フルフレームのミラーレスであるソニーα7S IIやα7 IIIカメラよりも1ストップ程度優れているが、やはりフルフレームのパナソニックS1やS1Hは12.7ストップ(こちらの記事を参照)で、これらよりも劣っている。また、IMATESTによると、C500 Mark IIが13.1ストップ(内部XF-AVC、フルフレーム)となっている(こちらの記事を参照)。なおα7S IIIは最終バージョンをまだ受け取っていないため、ラボテストを実行していない(レビューはこちら。また、実際の使用レビューはこちら)。

注意すべき重要な点は、ノイズしきい値(SNR = 2、中程度の値(ピンクの線))で11.5ストップとなっているが、明らかに更なるのストップが確認できる。–下のIMATEST結果の中央のグラフ(RMSノイズ)を参照。

SONY FX9 IMATEST result at ISO800 – a few additional stops are visible beyond the SNR=1 value.

これらの更なる(ノイズの多い)ストップはポストプロダクションでノイズ削減できる。ラティチュードテストを見ると、内部コーデックが正しくないことがわかる。将来のファームウェアアップグレードでRAW記録できるようになれば、確実にそれが可能になるはずだ。

ちなみに、内部ノイズ低減を「高」に上げると、ISO800で11.9ストップになる。

次に、2番目のネイティブISOである4000でテストする。

ISO4000でのダイナミックレンジ

ISO 4000でも、ISO 800時とまったく同じ結果が得られる。これはFX9で高いネイティブISO設定にしても画質が悪化しないことを示している。たとえば、パナソニックS1Hは、BMPCC6Kと同様に、高いネイティブISOに切り替えるとダイナミックレンジが0.4ストップ低下する。

ISO 4000でのステップチャートの波形でこれを確認できる。これは、ISO 800での波形プロットと非常によく似ている。

Waveform plot of the Xyla21 stepchart at ISO4000 for the Sony FX9 UHD internal XAVC all-I SLOG3.SGamut – again 12 stops can be identified above the noise floor.

また、IMATEST分析では、ISO 4000でも同じ結果を示している。信号対雑音比2(右上の表の中間値)に対して11.5ストップが確認される。

IMATEST dynamic range analysis of the Sony FX9 at ISO4000, using the internal all-I XAVC codec at UHD 25fps with SLOG3.SGamut. 11.5 stops are calculated.

ラティチュードテスト

S-Gamut3/ S-log3で、ノイズ除去を「オフ」にして測定している。波形モニターのルミナンス値が60%の場合、白い紙が65%前後になる。

これで、ISO 800(UHD 25fps)、f4.0で360°シャッター時に基本露出が得られる。そこから、シャッターアングルを180°、90°、45°、22.5°、最後に11.25°(露出不足は5ストップ)に減らして連続的に露出不足にしていく。

次に、ポストプロダクション(DaVinci Resolve 16.1Studioを使用)で、露出不足の画像を露出値0に戻す。

このテストは、カメラ(および使用されるコーデック)が色とディテールをどれだけ適切に保持しているかについて調べることができる。ほとんどのカメラは、3〜4ストップの露出不足で映像は使えないレベルになる。例外はC300 Mark IIIで、5ストップ露出不足でも使える画質を保持していた。

上の画像はベース露出を示している。次に、3ストップ露出不足にしたのち、ゼロに戻す。

残念ながら、3ストップ露出不足で、すでに顔の右側の暗い部分や暗い部分で、しみのあるパッチノイズが見られる。

下は、DaVinci Resolve 16.1を使用したノイズ低減テスト。

ノイズリダクションを使用すると、3ストップ露出不足の画像は使用できる。次に、4ストップ露出不足の画像をテストする。

見ての通り、ノイズが原因で画像は完全に回復できない状態になっている。DaVinciResolveでさらに強力なノイズリダクションを試した。下の画像を参照いただきたい。

4ストップ露出不足の画像に表示されるノイズは、クロマノイズのかすんだ斑点を表している。これらは、ポストプロダクションで画質をさらに犠牲にしないと、取り除くことができない。

参考までに、5ストップ露出不足の場合も載せておく。

これまでにテストした他のカメラと比較しても、かなり劣る結果となった。ただ、その理由は明らかではない。

この理由は、内部コーデックに起因する可能性がある。最高画質の設定が使用されたが(ソニーのcatalystソフトウェアを使用して確認した。下のスクリーンショットを参照)、All-Iコーデックは250 Mbit / sしかない。UHDのAll-Iコーデックの場合、これはかなり低いビットレートと言える。これはクロマノイズの原因となっている可能性がある。

Internal codec used for the tests reconfirmed in post by Sony’s Catalyst software.

まとめ

ローリングシャッターとダイナミックレンジで得られた結果は、フルフレームセンサーカメラの中では劣っているほうになる。これは、ソニーや業界の専門家にも連絡し議論もあったが、それ以上の進展は無い。

さらに、上に表示されたラティチュードテストでは、3ストップの露出不足以下では、画質を取り戻すことができないことが分かった。

もちろん、将来のファームウェアのアップグレードで改善されるのか知りたいところではある。上記のとおり、次のバージョンは間もなく(10月に)登場する予定で、このバージョンでは、オプションのXDCA-FX9ユニットを介して16ビットRAW出力が可能になる。その時点でもう一度確認してみたい。

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