
CP+ 2026に先立ち、シグマは人気ミラーレス用単焦点レンズ「35mm F1.4 DG II」の後継機となる「35mm F1.4 DG II | Art」を発表した。新レンズは前モデル比で約14%短く、20%軽量化されながら、シグマが「この焦点距離で史上最高の光学性能」と主張する性能を実現。LマウントとソニーEマウント用が選択できる。
35mm焦点距離はシグマの歴史において特別な位置を占める。2012年にアートライン全体を立ち上げた最初のデジタル一眼レフ用35mm F1.4 DG HSM | Artであり、サードパーティ製レンズに対する認識を根本的に変えた。シグマはその後、2021年にミラーレスカメラ向けに一から設計し直した35mm F1.4 DG DN | Artを発表した。そして今回、DG IIはさらなる大きな一歩を踏み出し、その改良は単なる改良にとどまらない。
完全に新規設計の光学系
35mm F1.4 DG II | Artは15群12枚の光学設計を刷新した(前モデルは15群11枚構成)。シグマは4枚の高精度非球面レンズと2枚のSLD(特殊低分散)レンズを採用。さらに従来加工が困難だった新素材ガラスも組み込んでいる。主な目標は、大口径レンズでは制御が特に困難で、ピントの合った部分のシャープネスとボケの質の両方に直接影響する軸上色収差の抑制だ。
ボケと言えば、11枚羽根の円形絞り機構は前世代から継承され、最大絞り値f/1.4から絞っても円形の絞り形状を維持する。シグマは非球面レンズの表面精度も改良し、玉ねぎリング状のアーティファクトを最小限に抑え、全体的に滑らかなボケ表現を実現している。
本レンズの新機能として、低屈折率アモルファス層を採用した新開発の反射防止処理「AAC(アドバンスト・アモルファス・コーティング)」を搭載。シグマによれば、ゴーストやフレアの原因となる内部反射を大幅に低減するため、厳しい光環境下での撮影が多い映像制作者や写真家にとって朗報となる。

フローティングフォーカスシステムによるコンパクト設計
最も目立つ変更点は、サイズが小さくなったことだ。フローティングフォーカスシステムを採用したことで、シグマは光学性能の向上とボディのコンパクト化を同時に実現した。Lマウント版は73.0×94.0mmで重量530g、ソニーEマウント版は73.0×96.0mmで525gとなっている。参考までに、旧モデルの35mm F1.4 DG DN | ArtはLマウントで645gだったため、ジンバルや手持ち機材で一日中携行するレンズとしては大幅な軽量化だ。
フィルター径も72mmから67mmに縮小され、既に67mmフィルターセットを所有しているユーザーには実用的な利点となる。最短撮影距離は28cm、最大撮影倍率は1:5.4。画角は両マウントとも63.4度だ。

デュアルHLAオートフォーカスと動画撮影向け機能
オートフォーカスはシグマのデュアルHLA(高応答リニアアクチュエータ)システムで制御される。これは昨年発売された35mm F1.2 DG II | Artと同じモーター技術だ。デュアルモーター構成は、大型のフォーカスグループをその質量にもかかわらず素早く静かに駆動する鍵となる。AFノイズが音声に混入する可能性がある動画撮影では、これが非常に重要だ。
フォーカスブリージング(焦点距離変化に伴う画角変化)については、フォーカスグループの配置と非球面形状の最適化により特に配慮されている。シグマによれば、フォーカスシフト時の画角変化は最小限に抑えられており、自然なフォーカス引きを求める映像制作者にとって極めて重要だ。この主張は当然ながら我々のテストで検証する必要があるが、シグマのアートII世代レンズにおけるブリージング抑制の実績は高い。
造りと操作性
本レンズは、縦横両方向で操作しやすい位置に配置された2つのAFL(オートフォーカスロック)ボタン、フォーカスモード切替スイッチ、クリック/デクリック切替機能付きマニュアル絞りリング、絞りリングロックスイッチなど、Artラインの全操作系を継承している。デクリック可能な絞りリングは、滑らかで無段階の絞り操作を必要とする動画ユーザーにとって特に重要だ。
構造はアルミニウムとTSC(熱安定性複合材)を組み合わせている。TSCはアルミニウムと同等の熱膨張率を持つポリカーボネート素材で、剛性を確保しつつ過剰な重量を抑えている。レンズ全体に防塵・防滴構造を採用し、前玉には悪条件下での保護を目的とした撥水・撥油コーティングを施している。ロック機構付きペタル型レンズフードが同梱され、ポーチ、前玉キャップ、後玉キャップも付属する。

価格と発売時期
シグマ35mm F1.4 DG II | Artは2026年4月16日より発売開始。米国価格は1,059ドル(国内価格は未発表)。これは旧モデルの価格を上回るが、シグマ自社の35mm F1.2 DG II | Art(1,549ドル)を大きく下回る価格設定であり、F1.2のプレミアム価格を避けつつArtラインの性能を求める撮影者にとって明確な価値提案となる。
本レンズはAPS-Cシステム向け新型「シグマ15mm F1.4 DC | Contemporary」と同時発表され、両レンズとも横浜で開催されるCP+ 2026に合わせて投入される。なお「35mm F1.4 DG II | Art」は発売当初、LマウントとソニーEマウントのみ対応し、キヤノンRFマウントの選択肢は発表されていない。シグマが様々なマウントエコシステムとの関係を拡大している現状(最近のAFシネマズーム開発も含む)を踏まえると、マウントの追加があるかどうかは興味深い点だ。































