4Kの時代に2Kで映画を撮る意義 - “White Crow”のNoam Kroll監督に聞く

4Kの時代に2Kで映画を撮る意義 - “White Crow”のNoam Kroll監督に聞く

Noam Kroll監督とD.P. のMatteo Bertoli氏がARRI Alexa ClassicでNoam氏の映画「White Crow」を2Kで撮影した。4K +のトレンドの現在、2Kで撮ることの狙いを聞いた。

読者の中にはブログやWebサイトでNoam Kroll監督を知っている人もいるだろう。彼の映画「White Crow」の制作は低予算で小規模なクルー、かつ短期間の厳しいスケジュールで始まった。ここに使用したすべての画像はNoam Kroll監督の好意により掲載している。

今回の映画制作について、Noam 監督とMatteo Bertoli氏に掘り下げた質問をした。

現実的な思考

プロジェクトで使用するカメラやワークフローを決定する際に考慮すべきことの1つは、制作の具体性だ。例えばスケジュール、場所、クルーの人数、照明プランなどで、これらは全て時間とリソースに影響してくる。

White Crowの制作について教えてください。スケジュール、クルーの人数や場所はどうでしたか?

Noam監督

White Crowは最小限のキャスト、クルー、場所で撮影できるように企画しました。脚本は実用性を念頭に置いて書かれています。映画の半分はある場所(主人公の家)で行われ、残りの半分はもう一人の家で行われるため、スケジュール設定は非常に簡単でした。日によっては9~10人のクルーで、9日間で全てを撮りました。通常、1日に10ページ近くを撮影するときは、ショットが犠牲になったり全体的な品質が低下する場合がありますが、私たちはこれらの問題を避けることができました。俳優の準備も完璧でしたので、私たちは撮影の量を求めることはしないで、時間をかけて品質の維持に努めることができました。

Matteo氏

スケジュールは非常に厳しいものでした。我々は1台のカメラと少人数のクルーで9日で81ページを撮りました。クルーは監督、1st AD、DP、プロデューサー、1st AC、照明監督、メーキャップアーティスト、プロダクションデザイナーそして衣装担当です。カメラ関連では、ほとんど3人でした。私たちは2軒の家と屋外で撮影しました。私たちがたった9日で長編映画を撮影することができたのは、Noam監督が映画の撮り方について非常に明確な考えを持っていたからです。ズームレンズやワンショットが多い場合は、ほとんど時間がかかりません。そしてそれは間違いなく非常に芸術的な映像になります。

望ましいルック

プロジェクトのルックをいかに簡単に作成できるかは、重要な検討事項になり得ます。カメラに関係なく、色や仕上げの面で多くのことをポストで行う必要があります。ただし、そのためには十分な画像情報を伴った撮影をする必要があります。演色性とダイナミックレンジ、そして記録フォーマットは、通常最も重要な要素です。

狙ったビジュアルスタイルやルックはどのようなものですか? またこれらはカメラ、アスペクト比、フォーマットなどに影響しましたか?

Noam監督

台本を書く前に、このコンセプトを4:3の縦横比で描いています。この映画は多くの古典的な映画、特にイングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)監督の「仮面/ペルソナ」(原題:Persona)の影響を受けています。 4:3は視聴者に閉じた感覚を与えるために使うことができ、そして私たちの性質(および彼女の心理的混乱)を考えると、4:3はこの作品に適したものです。私は早い段階でこのアイデアについてMatteoと話し、そして彼はそのことに同意してくれました。この映画は心臓移植を扱ったものなので、アナログ的な映像の方が適していると考えました。デジタルではリアルすぎます。そのため、ARRI Alexaの選択は必然的でした。そしてOptimo Zoomレンズと組み合わせることで、期待していたルックになりました。

Matteo氏

私がこのプロジェクトに参加した時、Noam監督は撮影についてすでに明確なビジョンを持っていました。彼は参考文献を送ってくれました。そして4:3で撮りたいと言ったのです。私は彼に「なぜ4:3?」と尋ねました。彼は実に良い返答を返してくれました。私はもともとツァイススタンダードスピードで撮影することを考えていました。しかし彼はズームショットを使おうと言いました。それで我々は2本のOptimoズーム、16-42と30-80に行きついたのです。基本的にレンズを交換する必要がないため、これは非常に賢明な選択でした。 ARRIのProResは幻想的な画なので、私たちはProRes 422 HQで撮ることにしました。私たちは4444で数ヵ所撮影しましたが、映画の98%は422 HQで撮影しています。ルックに関しては、Noam監督がコントラストが欲しいと言ったので、ネガティブフィルで俳優の顔のコントラストを強調しています。我々はまた、すべてを非常に暗めに撮影しました。露出不足ですが、我々はそのルックを気に入っています。

解像度について

良くも悪くも、解像度はもちろん1つのトピックだ。誰もが意見を持っており、何Kで撮るかについても意見が多々ある。 Noam監督とMatteo氏にとっては、単により多くのピクセルで撮ること以上に”良いピクセル”で撮ることが意味のある事だった。

ARRI Alexa Classicを採用し2Kで撮影するというあなたの決断は、現在のフルフレームや解像度信仰の中でユニークなものです。この決断はどうしてされたのですか?

Noam監督

私は過去5年間、長編映画を含むほとんどすべてのプロジェクトを4Kで撮影しましたが、それが私の作品に本当に大きな変化をもたらしたとは言えません。 HDの初期の頃にSD映像が時代遅れになったように、HDや2Kでの撮影が時代遅れにならないか本当に心配していた時がありました。しかし現在ではその心配は全くありません。もちろん、4Kに問題があるわけではありません。しかし、私にとって4Kは品質を表すものではありません。私は自分のiPhoneで4Kを撮影することができますが、それはAlexa Classicよりも映画の撮影に適しているということにはなりません。カメラの選択は常に個人的な好みに左右されますが、私の見地からすると、デジタルで撮影する場合Alexaに勝るものはありません。有機的なデジタル映像であれば、多くのピクセルは必要ありません。私は最近、ARRIのCPOプログラムを通してAlexa Plus 4:3を購入しました。しかしこれを使うのは簡単ではないですね。

Matteo氏

私はClassicのルックが好きで、MiniとClassicで多くのコマーシャルを撮影しました。これらがほとんど同じセンサーを共有し、2Kでしか撮影できないので、それほどシャープではありません。しかし、Noam監督がARRI認定プログラムからクラシック4:3を購入したとき、「これを使おう!」と言ってました。私たちは何十年もの間Super35mmで撮っており、不満はありません。4K?私にはよくわからないですね。”良い”フルHDや2Kに本当に満足しています。カラーサイエンス、ダイナミックレンジ、そしてハイライトがロールオフしていることなど、少なくとも私の意見ではARRIは業界で最高だと思います。また、暗い場所でのノイズ処理も気に入っています。ほんの少しの光しかない暗いシーンを撮影するとき、1280 ISOに設定しました。 Alexaのノイズはほとんどフィルムグレインのように見えますが、私はそれが気に入っています。

6K +や8Kが話題になっており、デジタルシネマカメラはフルフレームを採用しつつありますが、あなたは映画制作者としてのこれらの傾向についてどう思いますか?

Noam監督

私は、6Kや8K、あるいは映画制作をさらに前進させる技術に賛成です。解像度は、私にとって映画制作者としてのニーズは高くないかもしれませんが、もちろんそれは高品質な映像の重要な要素であり、ピクセル数を限界まで増やしているメーカーには拍手を送ります。映画制作者が遭遇する問題は、解像度が彼らの作品をより良くするという誇大広告であると私は思います。本当に6Kや8Kを必要としている特殊な作品を除いて、観ている映画の解像度を気にする観客はいません。視聴者の目に素晴らしく見えることが重要なのです。他のすべてが同等で、4Kで撮影できるのであれば、それを使わない手はありません。しかし、高解像度でも画質が劣っている場合は、そのようなカメラを選択しても意味がありません。単に大きいコンテナに映像を記録しているだけだからです。

Matteo氏

オスカーで最も一般的な記録フォーマットはARRIRAW 3.8Kです。製品のショットが必要な場合やVFXを必要とするシーンではもっと解像度が必要になる可能性がありますが、私は解像度については気にしないで、他のことを重要視しています。フルフレームに関しては良く分かりませんが、新しいレンズに投資しなければならないので、レンタル会社は大変でしょうね。しかし私はSuper35mmは無くならないだろうと確信しています。フルフレームは、おそらく風景などのショットには素晴らしいでしょう。私はそれに反対しているのではなく、今はそれが必要であると感じていないだけで、私が取り組んでいたプロジェクトがそのようなルックを必要としているとは思えません。しかし率直に言って、私が更にシャープな映像を撮影する必要がある場合は、可能な限りそのストーリーを伝えるための最良のツールを選択します。その場合、フルフレーム8Kで撮影するかもしれません。 私たちは今日多くの選択肢を持っていますが、正しいものを選ぶことが重要だと思います。

センサーや画像処理で技術的な革新がありますが、それらは本当に芸術を向上させるのでしょうか?芸術の発展のための革新でしょうか、それとも単なるビジネスサイクルでしょうか?

Noam監督

どちらかといえば、近年我々が見てきた多くの技術的進歩は、創造的なプロセスに悪影響を及ぼしています。 私はAlexa Classicで2Kで撮影することが夢でした。ProResファイルは小さく、転送時間は最小限で、ポストプロダクションではプロキシは不要で、編集は驚くほど速くできました。迅速なワークフローは、制作過程を短くしたい映画制作者にとって理想的です。もちろん、8K RAWでは同じようにはいきません。なので私はARRIのような優れたパフォーマンスを提供するだけでなく、信頼性と使いやすさによって創造性を高めてくれる製品を作っている会社を賞賛しています。

Matteo氏

私は、カメラは単なる道具であると強く信じています。前にも言ったように、私たちは注意して正しいものを選ぶ必要があります。多くの人がiPhoneで映画を撮影していますが、考えてみれば、これはばかげています。iPhoneでアナモフィック撮影ができますが、クレージーです。高解像度化の裏にはマーケティングがあります。8Kのことです。それは素晴らしいことかもしれません。しかし芸術は芸術であり、今日では文字通り何でもアートを作ることができます!

Alexa Classicについて

カメラシステムとそれに関連するワークフローは、プロダクションでどのように機能するかを考えるうえで本当に重要なことだ。

少ないクルーとタイトな撮影スケジュールで、Alexa Classicは実際どのようなセットアップにしましたか?

Noam監督

Alexaは非常に有用で、クルーも最高でした。そして、DP(Matteo Bertoli)のおかげで、すべてがシームレスになりました。多くの点でカメラによって物事がより合理化されたように見えました。 Alexaのカラーサイエンスとダイナミックレンジは非常に素晴らしいので、ライトやカメラのセッティング時間を短くすることができ、より多くの撮影時間を確保できました。 ARRIのカメラは見た目よりも良く映るので、画質を犠牲にすることなく作業のスピードを上げることができました。Alexa Classic Plusは他のほとんどのデジタルシネマカメラよりも大きくて重いですが、それは私たちにとって全く問題ではありませんでした。セットアップに時間が取られない分、あらゆるショットにこだわることができました。重いカメラは伝統的な方法で作業する必要がありますが、それでも多くの場合、デメリットよりもメリットの方が大きくなる可能性があります。

Matteo氏

Classicは戦車のようで、巨大な三脚とAC電源を必要とします。でも、この映画は実に簡単でした。私たちはいつも三脚を使っていました。また常時AC電源に接続していたので、ほとんどバッテリーは使いませんでした。ただ狭いスペースでの撮影時は、もっと小さなカメラが役に立ったでしょう。また短いですが車のシーンもいくつかありました。Classicは巨大で車内で撮影するのは大変です。しかし、私達はそれをやり、Classicで映画全てを撮ることができました。

ワークフローについて教えてください。

Noam監督

私たちは毎朝その日に撮影するすべてのシーンを確認することから始めます。そして誰かが効率を改善するための提案をすれば、スケジュールを微調整します。俳優との簡単な打ち合わせをした後、Matteo達撮影チームはカメラと照明を準備します。そして私は俳優と一緒にリハーサルを行います。そして撮影を開始しますが、それぞれ2~3テイク撮ります。あるショットでは8~9のテイク撮りましたが、幸いそのようなケースは稀でした。メディア転送は私が自分で行う必要があり、これが唯一の課題でした。私は自分のMacBook Proと2台の4TBハードドライブを用意し、そこにすべてのデータをセーブしました。編集時には、すべてのファイルをメインのRAIDシステムにコピーしてから、別の場所に保存してあるアーカイブドライブにコピーをもう1つ作成しました。

Matteo氏

私は特にロケが大好きで、その場所で何ができるかを理解します。私は、撮影の30分前にセットを完了し、カメラを持って歩き回って、最適な角度を確認して、照明監督と照明について考えます。私は自然光が好きなので、人為的な照明は本当に必要なときだけ使います。夜のシーンでは、簡単なものしか使いませんでした。露出に関しては、私は見た目で行い、安全を期すために偽色をチェックします。

時間と予算が限られている映画制作者にもAlexa Classicで撮ることを勧めますか?

Noam監督

もちろんです。特にDSLRで撮っている人たちにとっては、Alexaで撮影することは夢です。 Alexaのメニューはとても直感的で分かりやすく、その映像は他に類を見ません。ただし、これは完全に主観的な意見です。Alexsaは私の最適解かもしれませんが、映画制作者の創造性や実用的なニーズによっては、もちろん他のカメラも同様に有効な選択肢です。しかしAlexaで撮っている人々にとっては、やはりこれが最適解なのです。

Matteo氏

Alexsaは素晴らしいカメラです。そしてそれはL.A.なら一日約300ドルでレンタルできます。あるいはARRIのウェブサイトで、10~11,000ドルでClassicを購入できます。マットボックス、フィルタ-、バッテリー、レンズも必要になります。

4Kでなくても、画質において訴求ポイントになりますか?

Noam監督

はい。私は去年別の映画をリリースしました。約40の配給先や販売代理店からオファーをいただきましたが、解像度について聞かれたことはありません。多くの大作映画も4Kにこだわっていません。例えば、私はヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos)監督の「The Favorite(原題:同)」を見ましたが、これはsuper35mmで撮られています。IMDb (Internet Movie Database)によれば、これは2Kで撮影されています。 2Kで十分上映に耐えうるなら、私のような独立系の映画制作者には2Kでの撮影が適しています。

Matteo氏

ええ、私もそのように思います。 2Kで配信すれば十分だと思います。

正しい選択とは?

最新のものが常に正しい選択とは限らない。Alexa Classicのような実績のあるカメラや、あるいは現在自分が主力で使っているカメラであっても良いわけだ。

即ち、盲目的にトレンドを追うのではなく、カメラとレンズの選択や、ワークフローとポストプロダクションについて、創造性と実現性をうまくバランスさせている映画制作者の話を聞いてみるのも良いだろう。この記事はARRIと提携しているわけではないが、公式のARRI認定中古カメラプログラムの詳細については、こちらを参照していただきたい。

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