ミュージックビデオのアートディレクションPart1 - Cole Walliser監督インタビュー

ミュージックビデオのアートディレクションPart1 - Cole Walliser監督インタビュー

今や多くの人が音楽を鑑賞し、音楽ビデオはどこにでもある。我々はコンテンツクリエイターとして、ミュージックビデオを制作するが、それは楽しいものか、あるいは生活のためにやっているのだろうか。私はPnkKaty PerryLaura Maranoなどのミュージックビデオを監督したCole Walliser氏にインタビューする機会があった。ここでミュージックビデオの1つの側面、アートディレクション(芸術的な方向性)について議論した。

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Photo courtesy of Cole Walliser

ミュージックビデオ産業について

現在では音楽業界のアーティストとして脚光を浴びるのは簡単なことではない。新しい曲や新しいトレンドが日々生まれるが、音楽は今や消費材になっている。ユーザーはアーティストのアルバムを聴くが、すぐに別のアーティストに移ってしまう。

また、ビデオが無いと、曲だけで注目を集めるのは難しい。Googleに次いで世界最大の検索エンジンで、音楽ストリーミングのプラットフォームであるYouTubeには、毎分新しい音楽ビデオがアップされている。

もちろんこれは、新しいアーティストや新しい音楽を簡単に発見できるのですばらしいことではある。これらの新しいコンテンツマーケティングのニーズにより、若い監督の新しい時代が生まれている。同時に、ミュージックビデオに割り当てられるバジェットの削減で、新しい「トレンド」も生まれている。

ありがたいことに、「シネマティック」に見えるミュージックビデオを製作する機材も大幅に安価になった。キヤノンが2008年に5D Mark IIでDSLR革命を発表したのも、大きな影響をもたらした。制作コストはどんどん低下し、技術面での可能性はどんどん拡大している。ミュージックビデオを制作するには恵まれた時代になった。

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Photo courtesy of Cole Walliser

良いミュージックビデオを作るために

良いミュージックビデオ(例えば何度も見たいもの)はどのようにしたら作れるのだろうか?

もちろん、多くの側面があり、個人的な好みもあるだろう。最も大きな要因は、おそらくミュージックビデオの背後にあるコンセプトやストーリーだ。しかし、この記事では、芸術的な部分に焦点を当ててみよう。

では、作品を制作する手順を考えてみたい。 撮影日には、特に小規模なクルーでの制作では予算が少ないことが多いため、いろいろ工夫する必要がある。

まず、照明にできるだけ集中する。照明はミュージックビデオを生かすことも殺すこともできる。これは、カメラワーク、演技、編集、カラーグレーディングなどと同じ程重要な要素だ。

しかし、あまりにも大きいために普通は考えていないことが1つある。照明やカメラ、編集などといったものは、アートディレクションから考えれば一要素に過ぎない。

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Photo courtesy of Cole Walliser

アートディレクションが重要な理由

アートディレクションは、ミュージックビデオの最も重要な部分の1つだと私は思っている。私がアートディレクションについて語るとき、それは単なる色使いや、アーティストの衣装と言ったものではない。それはプロジェクト全体に流れる包括的なパッケージだ。制作者はプロジェクトのはじめにそれについて考える必要があり、アートディレクションに関する提案は間違いなく有用なものになるだろう。

照明の種類、ゲルの選択、カメラの角度、編集方法などに疑問がある場合は、プロジェクトの開始時に定義したアートディレクションに戻って考えると良い。もちろんこれも私の見解だが。

より多くの洞察を得るために、私はカナダのCole Walliser監督に、アートディレクションについてどのように考えているのかを尋ねた。

簡単に自己紹介をお願いします。

Cole Walliserです。私はロサンゼルスに住むカナダ出身の映画監督です。Pink、Katy Perry、Tinashe、Laura Maranoなどの作品を担当しました。私は美しさを表現する仕事もしており、CoverGirl、Pantene、Almay、Revlonなどの商用デジタルコンテンツも担当しています。

あなたにとって、「良い」ミュージックビデオというのは、どのようなものですか?

単刀直入な質問ですね。通常、私が「良い」と感じるビデオは革新的なものです。通常とは少し違うものです。だからDanielのビデオはいつも驚くものですが、的を射た非常にシンプルなビデオが好きです。ビジュアルが曲の感情と合っていれば、私はそれを良いものと思うでしょう。

過去数年間で音楽とミュージックビデオ産業の変化を感じますか?

もちろんです。小型で安価なデジタルカメラの登場により、特にミュージックビデオは大きく変わりました。突然誰もが監督になり、誰もがミュージックビデオを作れるようになったのです。これは大変良いことだと思っています。

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Photo courtesy of Cole Walliser

アートディレクションとその重要性をどのように考えますか?

ミュージックビデオにおいて、アートディレクションは最も重要なものです。ミュージックビデオは、ストーリーはありませんが、溢れるほどのビジュアルがあります。映画やテレビ番組、あるいはコマーシャルではそのようなことはありません。ただ、アートディレクションを定義するのはちょっと難しいですね。それは、映像がどのように見られるか、感じられるかということですので。

ミュージックビデオのコンセプトはどのようなものですか?アーティストのアートディレクションに依存するのでしょうか?

それはプロジェクトによって異なります。時にはレーベルやアーティストには非常に具体的なビジョンがありますが、そのビジョンを実現可能で創造的なものに再構築するのは制作者次第です。しばしばそれは非常に曖昧なもので、制作者がそれを解釈することが望まれます。 (たとえば、ラブストーリーに合ったものが欲しいとか、ビーチに合ったものが欲しいなどと言った感じです)。

あなたにとって、アートディレクションは、カメラとレンズの選択、照明、カメラの動き、編集、カラーグレーディングなど、どのような要素が最も影響しますか?

個人的には、全体的なルック・アンド・フィールやプロダクションデザインと言ったところに、アートディレクションを見ています。コンセプトの方向に関係する特定のショットがある場合は、レンズの選択もそれに含まれます。また、16mmのセクション全体を創造的に撮影する場合、カメラの選択もあります。コンセプトを満たすためにカメラや編集、またはカラーが重要な場合、アートディレクションによって、それが何であるべきかが決まります。

これからの監督は、アートディレクションにもっと焦点を当てるべきだと思いますか?

仕事の改善のために、監督は多くのことができると思います。映像産業は常に進化しており、監督として常に学習する必要があります。一般的にはアートディレクションも、他の要素と同じくらい重要な要素の一つですが、特にミュージックビデオについて語るのであれば、ミュージックビデオはアートに大きく傾いているので、それは更に重要だと思います。

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Photo courtesy of Cole Walliser

あなたは新人のアーティストにヒントを与えることがありますか?

私はアーティスト、特に自分自身を初めて評価したり、見つめ直したりしている新人アーティストとの会話を楽しんでいます。私が持っている唯一のヒントは、俯瞰するということです。どのように表現したいのか、ということです。単に状況を見るのではなく、何がインパクトを与えるのか、ということを考えるべきです。

あなたが1つだけアートディレクションを持つミュージックビデオを選ぶとしたら、それは何ですか?またその理由は?

私が監督した最初のティナーシェ(Tinashe)のミュージックビデオです。彼女はアーティストになったばかりで、私たちは制作費がほとんどありませんでした。私たちはMaxi-Brutesライトのような照明にするため、家庭用の照明器具を購入し、倉庫でダンスビデオを撮影しました。ポストプロダクションで色を微調整しましたが、実にうまくできたと思っています。

仕事を一緒にするアーティストを1人選ぶとすると、誰を選びますか?

難しいですね。でも、女性アーティストとの仕事は大好きです。彼女たちは、明るく、暗く、強く、柔らかく、美しく、激しく、と表現が豊です。良くも悪くも、この分野は女性アーティストはダイナミックです。

最後に、伝えたいことはありますか?

アートディレクションに関して私の考えを述べる機会を与えていただいたことに感謝します。今後のプロジェクトにこれからもっと多くのことを考えていくつもりです。

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Photo courtesy of Cole Walliser

Part2では、ミュージックビデオ業界のアートディレクションについて、更に多くのインタビューや考え方を紹介したい。

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