ソニーの湾曲カメラセンサーの方向性

ソニーの湾曲カメラセンサーの方向性

ソニーの湾曲カメラセンサーに関する新しい特許は、カメラとレンズの技術を大きく前進させる可能性がある。カメラは、もはや数字の上では進歩し続けることはできない。4K映像の配信は今後も継続され、非リアル10ビットカラーのHDRディスプレイはまだ市場に十分に浸透しておらず、高フレームレートの必要性は120fps前後で劇的に低下する。4K以上、8ビット以上、最大120fpsの撮影が可能なカメラが増えていく中で、カメラメーカーはこれらの数字だけで新規購入の動機付けを続けることは難しいだろう。

進化を続けるための一つの方向は、ピクセルごとのトランジスタ技術もあるが、センサーの形状を変えるという方法もある。これがソニーの最新の特許の湾曲センサー技術だ。この技術は、カメラとレンズの両方に真のイメージング効果をもたらす。ソニーはこの開発に着手したようだ。

しかし、これはかなり予備的な技術だろう。現実に存在するものだが、しばらくは民生用製品に採用されることはないと思われる。ただし、曲面センサーは、デジタルカメラ以外の分野では以前から存在していた魅力的な技術だ。

湾曲センサーは昔からあった

忘れてはならないのは、史上最も偉大で野心的な写真家は、カメラマンではなく天文学者だったという事実だ。望遠鏡のレンズやセンサーの設計は、50メートルの焦点距離や、圧力で曲率を調整できる液体ミラーなど、信じられないほど高度な技術を採用している。湾曲したイメージングプレートは、天文学者の間では古くから使われており、歪みのない画像を得るために使用されているが、同時に焦点素子の配置を単純化している。

Curved sensors have been around for a while, now. Image credit: HRL Laboratories

キヤノンは最近、曲面技術に注目し始めたが、ソニーは、少なくとも2014年に曲面センサーの特許を取得している。ニコンは2010年に特許を取得しており、後には特定の曲面センサーレンズの特許も取得している。

曲面センサーの仕組み

基本的に、湾曲したセンサーは、湾曲した光学素子から入ってくる画像を解像するのに適しており、画像の歪みを克服するための複雑なレンズ構成を必要としない。即ち湾曲センサーを使用すると、フレームの端に来る光線の歪みを補正するためのレンズが不要になる。人間の目は、湾曲した網膜と神経学的な歪み補正を組み合わせてこの問題を回避している。もしも網膜が湾曲していなかったら、目は実際よりもはるかに複雑な器官になっていたかもしれない。

つまり、曲面センサーを念頭に置いてカメラレンズを作れば、内部のレンズを大幅に減らすことができ、小型・軽量化と光の透過率の向上、さらにはコスト削減にもつながるということだ。湾曲センサーの最大のメリットは、撮像そのものではなくレンズにある。湾曲センサーは、広角レンズでよく見られる歪みを軽減できる可能性を持つが、特に最新のデジタル歪み補正を使用した場合には、このレンズ設計上の利点が最も重要になる。

Image credit: FUJIFILM

つまり、湾曲センサーを持つカメラ用には、湾曲センサー用のレンズを新たに購入する必要がある。

技術的な完成時期

10年かけてEマウントを構築してきたソニーが、もう一度ゼロからやり直すとは考えにくい。もしこれをやるとすると研究開発費がかさむだけでなく、Lマウントアライアンスのような遅れをとっている競合他社の状況を有利にすることにもなりかねない。すでにリードしているソニーが、この状況を変える必要があるだろうか。

一方で、ブラックマジックデザインのようなセンサーメーカーは、カメラ側でこれを追求することができるかもしれないが、同社は独自のレンズを作っていないし、これから作ろうともしていない。そのため、この分野ではキヤノンをはじめとするレンズメーカーに依存している。従ってカメラメーカーとしてもレンズメーカーとしても、現在は販売チャートを独占していないニコンとフジだけがこの分野に挑戦する意味があると考えられる。

湾曲センサーは、ミラーレスカメラよりもさらにレンズを小型化し、広角域での歪みを低減できるため、技術的には大きな前進となる可能性があるが、実際の製品を目にするのはしばらく先になるだろう。というのも、ソニーはもっと簡単に実現できる他のセンサー技術の特許も取得しているからだ。これらの特許は、競合他社の市場参入を遅らせるためのものであると同時に、ソニーが現実的に追求すべき新しい技術でもある。

湾曲センサーの話題には注意が必要で、フラットセンサーの分野ですでに優位に立っているソニーが湾曲センサーのカメラを発表するという推測には懐疑的にならざるを得ない。技術的な実現可能性だけではなく、ビジネス的な可能性を考えることが、今後の湾曲センサーの方向を見極めるポイントだろう。

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